目次
意識レベルを評価してみよう
意識レベルはJCSとGCSで評価する
今回は傷病者の意識レベルについて学習していくよ。
意識レベルの評価にはJSCとGCSがあることは知ってるかな?
JCSが「ジャパン・コーマ・スケール」でGCSが「グラスゴー・コーマ・スケール」ですよね!
そのとおり!
救急搬送時において重症度と緊急度を意識障害において判断する基準が第一段階では生理学的評価なんだ。
生理学的評価?
そう!
血圧とかSpO2(血中酸素飽和度)の数値ももちろん大切だけど、この患者が感覚でやばいなって察することが重要なんだ。
つまり緊急度と重症度の判断基準で最初にくるのが意識レベルの評価ってことですね!
でしたらJCSとJCSについて詳しく見ていきましょうよ。
JCSとGCSの特徴
意識障害では、患者が意識がどの程度あるのかを測る物差し(スケール)
が必要です。
現場の救急隊が傷病者を医療機関(病院)へ搬送するためには、
医療機関へ収容依頼の電話をしなくてはなりません。
電話のみで現場にいる救急隊と病院側の中で統一認識がなければ、
傷病者の意識レベルを伝えることができないのです。
そこでJCSとGCSを用います。
JCS(ジャパン・コーマ・スケール)はその名のとおり日本の医療現場で
統一された物差しであり、大半の現場ではこちらを使います。
理由は評価が簡単だからです。
時間はかからないですし、悩むこともありません。
しかし、欠点もあります。
目の開眼状態次第で評価のレベルが変わってしまうのです。
例えば、脳疾患で失語症状と完全麻痺が出ていても意識レベルは3。
交通外傷で出血性ショックが疑われる患者が不穏状態であれば
正確な評価が難しくなります。

※ R =不穏 I =失禁 A=自発性喪失
一方でGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)は、日本だけでなく
世界的に共通しているという点があります。
目の評価で4点、声で5点、従命反応で6点の計15点で評価します。
どの評価も最良というところがミソです。
つまりJCSの0(ゼロ)がGCSですと15点となるわけです。
E
【Eye Opening(目)】 |
4 常に開眼している。
3 呼びかけると開眼する。 2 刺激をすると開眼する。 1 痛み刺激をしても開眼しない。 |
---|---|
V
【Best Verbal Response(声)】 |
5 正常な会話
4 会話は成り立つが見当識が混乱している 3 会話は成り立たない。単語の単発 2 意味のない発声 1 発声なし |
M
【Best Motor Response(従命反応】 |
6 指示に従える
5 痛み刺激で手を払いのける 4 指先への痛み刺激で手を引っ込める 3 痛み刺激で上肢を異常屈曲させる(除皮硬直) 2 痛み刺激で異常伸展させる(徐脳硬直) 1 痛み刺激に反応なし |
特に脳神経外科の先生は、このGCSで評価している先生が多いことから
脳疾患の重症度と緊急度はこのGCSの方が判断しやすいことが特徴です。
GCSは「目」、「声」、「従命反応」を点数化して詳細に意識レベルを
評価できることからJCSに比べて観察項目は増えてしまうが、正確性は
高くなります。しかし、なんらかの原因でどれかひとつでも観察することが
できなければ評価として成り立たないという弱点もあります。
意識障害について学習しよう
意識障害とは
これで意識レベルの評価は完璧だね。
次は意識について少し考えてみようか。
意識って言葉で表現すると確かに難しいですね。
なんとなく、起きてる状態ってイメージがありますけどね。寝てる時って意識ないじゃないですか。
現役時代に仮眠時間中の出動は今でも思い出すだけで大変だったよ。
そうそう。寝てる時は周囲からの情報を認知できないからね。
もちろん目は瞑っているから覚醒もしていないしね。
あとは意識ってなんだと思う?
あとは、、、意識レベルの評価でもありましたけど見当識がわかるってことではないでしょうか。そもそも見当識がなければ会話が成立しません。
つまり、意識ってのは覚醒、認知、見当識が正常でこれらに対して反応できる状態かどうかってこと。
ちなみに救急現場でよく意識障害のある傷病者は大きく分けて2種類に分かれるんだ。
それは意識障害の原因が「脳から直接影響を受けるもの」と「脳以外の原因から間接的に脳に影響を受けるもの」ですね!救命士の国家試験に出てきました!
脳自体の病変によって起こる意識障害は一次性脳病変で、脳実質以外の病変で全身障害から脳が機能不全を生じた意識障害を二次性脳病変というんだったね。
意識障害には一次性脳病変と二次性脳病変がある
意識は、先ほど隊員たちとも話していましたが「覚醒」「認知」「見当識」
の3つがしっかりとしていて晴明となります。
この3つを支配している体の部位は言わずとして「脳」です。
この脳機能がしっかりと働くことにより、我々は意識を保つことが
できるのです。
しかし、なんらかの原因でこの脳機能が低下することにより
意識障害が起こるというのはなんとなくわかるでしょう。
この一次性と二次性というのは、簡単に説明すると
「脳自体が損傷やダメージを直接受けたことにより、脳機能が低下する。」
「脳以外の臓器や部位がダメージを受けたことにより、脳機能が低下する。」
という2種類に分かれます。
一次性脳病変とは、脳の実質もしくは脳血管に原因を認め、
意識障害が起こる疾患の類です。
具体的な疾患としては、外傷や脳血管疾患、脳腫瘍など脳の特定部位に支障を
きたすものや脳炎、髄膜炎、中枢神経感染症、てんかんなど脳全体の炎症、
浮腫、機能異常によるものの2つがあります。
一次性脳病変を疑った場合は意識障害の他に頭蓋内圧亢進症状として頭痛、
吐気・嘔吐の有無、脳炎を疑い統合失調症様症状の出現の有無を確認する
必要があるのです。
また、特徴的な神経学的所見としては片麻痺や瞳孔不同、共同偏視など
の症状があります。
また二次性脳病変は、上記でも説明したように脳に直接的な損傷やダメージを
受けてはいないが、他の部位のなんらかの影響を受けて脳機能が低下し、
意識障害を起こす疾患の類です。
症例に多いものとして、大量出血や太い血管の梗塞による血液の循環障害、
低酸素血症や高二酸化炭素などの呼吸障害。
他にも感染症や敗血症、内分泌系、代謝異常などが考えられますね。
いわゆるショックと言われる原因を想像してもらって全然おっけーです。
一次性脳病変 | 二次性脳病変 | |
原因 | 意識中枢(脳)が損傷を受ける | 酸素、グルコース、血流が障害 |
障害 | 覚醒障害が強い | 認知障害が強い |
進行 | 急速 | 緩徐 |
意識レベル | 変動が少ない | よく変動する |
神経局在徴候 | 伴いやすい | 伴うことは少ない |
瞳孔異常 | 伴いやすい | 伴うことは少ない |
呼吸障害 | 重症では伴うことが多い | 伴うことが少ない |
不随意運動 | 少ない | 伴うこともある |
疾患例 | 脳血管障害、脳腫瘍、感染、てんかん、精神疾患、頭部外傷 | 循環障害、低酸素血症、グルコースの減少、異常体温、電解質異常、薬物服用 |
意識障害の原因
意識障害を起こす原因が脳に直接原因があるか、そうでないかで2種類に
分かれるということがわかりました。
ここでは、意識障害の原因について有名な語呂合わせをいくつか
ご紹介したいと思います。
私も現場でたくさん経験しましたけど、
意識障害の原因ってほんとにたくさんあるんです。
つまり、意識障害ってそれだけ深いってことなんです。
だって、たくさんある原因の中から原因の可能性の高いものを見つけだし
適切な病院へ搬送しなくてはならないのですから。
だから一緒に勉強していきましょうね。
「AIUEOTIPS」
A Alcohol,Arrhythmia(不整脈)
I Insulin(低血糖、高血糖)
U Uremia(尿毒症)
E Endocrine(甲状腺、副甲状腺、副腎)Electrolyte(電解質異常)Epilepsy(脳炎/脳症、てんかん)
O Opiate(鎮痛剤),Overdose,O2,CO2,CO
T Trauma (外傷),Temperature(体温),Toxin(中毒)
I Infection (感染症), Infarction (塞栓症)
P Psychiatric (精神),Pharmacy (薬物)
S Syncope (失神)、Stroke(脳出血/脳梗塞/SAH/脳血管攣縮症候群)Seizure (痙攣)、Shock (Sepsis/脱水/閉塞性/心源性/分布異常)
「意識に障害 なるほどまずい 試して酸素」
い → インスリン 低血糖 高血糖
し → ショック
き → 飢餓 低栄養
に → 尿毒症 腎疾患
しょう→ 消化器疾患 肝疾患
が → 外傷
い → 飲酒 アルコール関連
なる → ナルコーシス
ほ → ホルモン異常 甲状腺・副腎疾患
ど → 瞳孔不同 脳ヘルニア
ま → 麻薬 薬物毒物中毒
ずい → 髄膜炎 脳炎
た → 体温異常 熱中症・偶発性低体温
め → メンタル 精神疾患
し → 失神
て → てんかん 痙攣
さん → 低酸素血症
そ → 卒中 脳卒中
参考)PCECガイドブック2016
〜救急隊員による意識障害の観察・処置標準化〜
復習してみよう
効果確認テスト
20代男性、交通事故現場で頭部を負傷。
うーうーと声を出しているが、会話は成立しない。
目が開いてなかったので、痛み刺激をすると目は開けず手を払いのける。
この方の意識レベルをJCSとGCSで評価してください。
下で解説します
さて、復習の時間だね。
私も実際に出動して、このような現場は結構あったんだ。
特にこの20代っていう若者の交通事故も大きいものが多いんだよね。
意識レベルの評価が問題になっているからJCSとGSCで評価しようと思います。
交通事故現場ということで、すぐに評価できるJCSから評価してみます!
まず開眼はないからJCSⅡ桁以上は確定ですね。
痛み刺激をしても開眼がないからJCSはここでⅢ桁が確定する。
手を払いのけるのは100だからこの傷病者はJCSⅢー100です!!
ってことは、重症だ〜!いそがなきゃ〜!
そのとおり!JPTEC(病院前外傷教育プログラム)でいうロード&ゴーが適用されてしまう緊急的な現場だね。じゃあ、頭部を負傷しているみたいだから
GCSでも評価してみようか!
はい隊長!
痛み刺激をしても開眼しないからEは1点
声は出せるけど単語にも会話にもなってないからVは2点
痛み刺激で手を払いのける動作があるからMは5点になります。
よって合計は、、、、、
8点!?
これも重症です!急ぎます!!
はい正解!
頭蓋底骨折や脳ヘルニアの可能性まで出てきちゃったね。
急いて高度救命センターのある病院へいくよ!!
60代の女性が意識消失。
夫からの情報で意識はだんだんと薄くなっていき
頭痛や嘔気は訴えてなかった。
糖尿病の既往があり、普段から注射でコントロールしているそうだ。
この傷病者に行う観察と処置はどんなものがあるだろうか。
下で解説します。
これは傷病者の既往と意識障害が起こった瞬間の目撃情報が結構大事な問題なんだ。
既往に糖尿病があるってことは、血糖値がどれくらいあるのかがすごい
気になります。でも、脳疾患を否定したいし、、、。
あ!頭痛を嘔気は訴えてなかったって旦那さん言ってました。
あとはクッシング徴候と瞳孔不同さえなければ、血糖値測定を実施して
血糖値が低ければ、静脈路確保とブドウ糖投与ですね!
そのとおり!
血圧が高くて、脈が遅かった場合(クッシング徴候)とか瞳孔不同や共同偏視が出てしまっていたら、3次救命センターか緊急的手術ができる脳外科医のいる病院への搬送が必要だね。
今回の症例でいえば、脳疾患は否定できそうだから私だったらかかりつけの病院か直近の二次病院に搬送してるかもね。
まとめ
今回は意識レベルの評価について学習していきました。
現場で傷病者に取りついた際に一番最初に観察するのが、
初期評価です。いわゆる機械や器具を使わないで観察を行う。
隊員の感覚や嗅覚が試されるところです。
観察項目は最初にもお話ししましたが、意識、気道、呼吸、循環です。
いわゆるこの傷病者がしっかり生きているかどうかの確認です。
この観察はどんな事例になっても間違いなく実施することで、
例えば、心肺停止が疑われる傷病者でももちろん。
外傷や多数傷病者がいるような現場でもこの初期評価だけはするんです。
立場が変わって病院内であっても、医師や看護師もまずこの初期評価は
必ず行ってから次の観察に移行するのです。
そのためにもこの意識レベルの評価ができなくては次に進めないと思い
最初の投稿を意識レベルの評価にしてみました。
また、皆さんと一緒に勉強できるように投稿を続けて行きたいと
思っております。